皇帝のかぎ煙草入れ / ジョン・ディクスン・カー

※この記事は過去ブログからサルベージされました。

皇帝のかぎ煙草入れを読みました。(以下、若干ネタバレありかもです。)

 

ストーリーとしてはとある女性が婚約者の一家と芝居を観に行って、婚約者の家の向かいにある自分の家に帰ってきたところ、離婚した元夫が渡していた合鍵を使って家に入ってきた。追い払おうとしてもしつこい。向かいの家は婚約者の家なのに見つかったらどうするのよと焦る彼女。婚約者の父親は骨董品のコレクターで今日もお宝を手に入れたらしくこの時間まで部屋の灯りはついている。父親にみられては大変と自分の部屋の電気を消す。そこで彼女と前夫は向かいの家の父親が何者かに襲われて倒れているのを目撃してしまう。

彼女は前夫と一緒にいたことを婚約者家族に知られたくない、どうやってアリバイを証明しようかしら・・・?というお話。

 

ディクスン・カーははじめて読んだのですが、カーは密室を得意とする作家として有名です。さらに、怪奇やホラーの雰囲気を取り入れた筆致で物語をすすめるのが得意とのことで、古典にしては割りと夢中になって読み進めました。

それから、恋愛小説的な要素でも味付けされていて。その辺りもうまいな~と思いましたね。

 

横溝正史が一番敬愛していた作家がカーらしい。「夜歩く」っていうカーの作品と同タイトルの作品を書いているくらいだからね。横溝の「夜歩く」は読んだことあります。大好きな作品です。

 

密室というと機械トリックであったり、物理トリックあたりに収まりがちですが、このトリックはそのどちらでもなく、かつしっかりと論理的に帰結するものでありました。

探偵役の精神科医も最初は地味かな~と思っていたんですが、だんだんとキャラクターが見えてきて。あ~、このあたりはお話のオチにもなってしまうことなんで言えないんですが・・・。もどかしい。

 

ちなみに今並行読書してるのがアナイス・ニンの日記なんですけど。

 

インセスト―アナイス・ニンの愛の日記 無削除版 1932~1934

インセスト―アナイス・ニンの愛の日記 無削除版 1932~1934

 

 アナイスが精神科医と懇意になって、彼に自分のコンプレックスだとか、父親への想いだとかを相談していくうちに彼に対して思慕のような想いを寄せるようになるってところをちょうど読んでいたのですが。

それとイメージが重なって、より豊かな読書体験になったように想います。

 

なのでこの2冊セットで読むの、おすすめです。「皇帝のかぎ煙草入れ」は1942年の作品なのでこの日記よりはちょっと新しいですね。でも、精神分析が流行ってたんでしょうね。カーの取り入れ方はすごく巧みだったので、その辺り分野としても洗練されてきた時代だったのでしょうか。