愛の渦

※この記事は過去ブログからサルベージされました。

この間塚口サンサン劇場でやっていた愛の渦っていう映画を観に行ったんですが、その感想をFacebookにメモ書きのつもりで書いたら久しぶりにまともな感想文かけたのでこちらにもあげとこうと思います。

 

面白かったけど、もっと面白くなるだろうこの題材〜!って感じした。元が演劇だからか冗長さが気になった…。しかし、あの360度回転ベッドシーンは映像の快楽があってよかったと思います…。俳優もよかった。やはり窪塚洋介新井浩文はずっとすきな俳優です。

一晩たったのでもう少し詳細な感想。

冗長と感じた演劇的な箇所というのはやはり会話劇的な部分にある。

現代演劇というのは人と人が作り出す空間のリアリティに重きを置いていると思うのだけど、ああいった特殊な状況で人はどのような行動を取るのか?という実験性に端を発しているのが演劇だと思う。
でも、それってあまり映画的ではないよね、っていうのはよく言われている議論で。
映画であまり会話劇をやってしまうと冗長に感じてしまうのはそこに理由があると思う。
映画は会話を見せるわけではない、アクションを見せるためのものだから。

しかし、リアリティという点で興味深かったのは、無造作に集められた(ように見える)男女が自然とあの閉鎖空間でコミュニティを作り、社会的な階層をそのまま映し出していた、と言うことだろう。
たしかにこのメンバーならそういう順番でペアになって行くだろうな、という。つまりルックスとか社交性とかで上位の人間からクリアしていく、という点。
自然と個性が強すぎる人同士、地味同士で仕方なく?くっついてしまう。こういうところは皮肉が効いていた。

そうして出来上がった社会構造の中で唯一物語になり得ていたのがそのはみ出した人たちであって。

唯一アクションをしていたのが門脇麦という女優であり。
彼女だけがあの空間で「聖」たり得ていた。

この構造は「桐島、部活辞めるってよ」で最もコミュニティの下位にいる人間が最も「聖なるもの」に近づける、枠組みを脱することができるという構造と同じであった。
あのパゾリーニの「テオレマ」で描かれているものと同じである。

 

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そして映画のラスト、彼女は誰も届かない、誰にも「本当の自分」なるものを捉えさせぬまま、物語は終わってしまう。それは映画として少し不誠実さ(?観客としては釈然としない思いを抱えて劇場を後にすることになる。主人公と同じように)を感じさせながらも、やはり「リアリティ」としては正しいのだな、と思わせる結末であった。