おにいさまへ…/出崎統

YouTubeで現在全話配信されているアニメ、『おにいさまへ…』が面白い。

先週の土日から夢中になって観ている。

 


おにいさまへ… (第21話 - 第39話)

高校受験を控えた中学生・御苑生奈々子は、進学教室で講師のアルバイトをしていた大学生の辺見武彦に「おにいさまになってください」と申し出て文通を始める。奈々子は高校生活を「おにいさまへ」の手紙に綴る。

奈々子が入学した青蘭学園高等部は良家の令嬢が集う名門女子校。入学式の日、学園の特権組織で、選ばれた生徒のみが入会を許される社交クラブ・ソロリティの存在を知る。自分とは無縁の世界と思っていた奈々子だったが、なぜかクラスメイトの信夫マリ子と共にメンバーに選ばれる。奈々子は周囲からの嫉妬や噂に苦しむが、「薫の君」こと折原薫や「サン・ジュストさま」こと朝霞れいに救われる。ソロリティ会長の一の宮蕗子も不自然に奈々子をかばう。やがて奈々子はれいの孤独な境遇を知り、強く惹かれていく。

アニメは手塚プロダクションの製作でNHK−BSで91年から92年まで放送されたそうな。監督はガンバの冒険あしたのジョーで有名な出崎統。テーマソングは小椋佳原田真二によるもの。声優陣もいまや大御所となった方たちばかり。と、スタッフ陣だけ見ても絢爛豪華。また、池田理代子が70年代の少女漫画全盛期に連載していたリリカルでゴージャスな世界観を90年代の成熟したアニメ技術で見事に再現している。

 

少女漫画のナンセンス描写と出崎統の止め絵やリフレイン、光と影を巧みに使い分ける演出術が調和し、アニメーションでしかなし得ない世界が創造されている。

踏切のサイレンが鳴って赤い点滅と電車が通り過ぎる音が鳴り響くという不穏さを表現する演出なんかは庵野秀明に多大な影響を与えていることがよくわかる。

また、室内で花びら舞い風吹く演出をするためにソロリティーハウスのステンドグラスにカラスが突っ込んで窓が割れるという力技を見せる。

ストーリーに関しては最初は少女漫画的なご都合主義だと思いながら観ていたが、話数が進むにつれてそんな単純なものではないということがわかる。

最初のころは「こいつらなんで肝心なことをちゃんと説明せずに思わせぶりなことばかりしてるんだ!」と思っていたけど、登場人物の謎が一つ一つ明かされるにつれてこれまでの行動にも道理があったことがわかってくる。

重要なのは彼女らの同性愛的なものに目がいきがちだけどそれは実は異性へのコンプレックスの裏返しということだ。男性へのコンプレックスがあるからこそ同性と恋愛の真似事をしてみたくなる。大人の階段を上がるためのシミュレーションとして少女漫画の意義があるということがよくわかる。当初クレイジーサイコレズとすら思われていた信夫マリコですら年上の男性、一ノ宮貴との恋のような関係を匂わす描写があるのだから。

とは言え、わたしもまだ最終話まで視聴していない。今後またまさかの展開が待ち受けているともわからない。引き続き楽しく観続けていきたいと思います。